内科
呼吸器疾患

呼吸器疾患とは

呼吸に関わる複数の臓器や器官を、まとめて「呼吸器」と呼びます。

具体的には、以下の臓器(器官)が呼吸器に該当します。

 

•鼻(鼻孔・鼻腔)
•口(口腔)
•咽頭
•喉頭
•気管・気管支
•肺
•胸郭(胸膜・胸壁・横隔膜)

 

これら呼吸器に起こる病気が、呼吸器疾患と呼ばれます。

主な呼吸器疾患は以下のとおりです。

 

•肺結核
•壊疽性気管支炎
•気管支拡張症
•肺壊疽
•肺腫瘍
•気管支喘息
•COPD(閉塞性肺疾患)
•睡眠時無呼吸症候群
•過換気症候群(過呼吸)
•肺炎 など

 

呼吸器疾患の原因には、細菌やウイルス感染・アレルギーやタバコ・癌など様々なものがあります。

呼吸器疾患の症状

細かな症状は罹患部位により異なりますが、多くの呼吸器疾患では以下の症状が見られます。

 

呼吸器疾患の主な症状

•咳(継続的な咳)
•痰(頻度が多い・黄色や茶色になる・血が混じる)
•呼吸困難(息が苦しい・息が切れる)
•胸痛(チクチク・締め付けるような痛み)
•喘鳴(呼吸音がゼーゼー・ヒューヒュー)
•発熱(風邪ではないのに熱が続く)
•いびき(睡眠時の無呼吸)

 

これらの症状は疲労や風邪(急性上気道炎)などでも起こります。通常は安静にしていれば3日程度で改善が見られることがありますが、症状が長く続く場合には、内科や呼吸器科で相談しましょう。軽度な咳喘息を放置したために、本格的な気管支喘息を発症してしまう場合もあります。

呼吸器疾患になるとどうなる

上記の症状が出るほか、呼吸器疾患になると以下のような変化が出やすくなります。

 

•運動すると苦しい
•疲れやすい
•風邪やインフルエンザが悪化しやすい
•いびきや咳でよく眠れない 

 

呼吸器疾患を長く放置すると、他の疾患を併発する可能性が高まります。特にタバコが主な原因となるCOPD(閉塞性肺疾患)は、合併症の多い病気です。COPDにより炎症が起きている肺から、サイトカインと呼ばれる物質が出て、全身の炎症を引き起こすためです。

 

また、心筋梗塞・脳卒中や狭心症など、命に関わる重大な合併症を起こすこともあり、毎年日本人の1万人以上がCOPDで亡くなっています。COPDを持つ人の500万人が未受診というデータもありますので、咳や痰・息切れが続く方は医師に相談しましょう。

 

【参考】:COPD(慢性閉塞性肺疾患)情報サイト

呼吸器疾患になりやすい方

普通に生活をしていても、呼吸器疾患にかかることはあります。また、感染性の呼吸器疾患や気管支喘息・COPDなど炎症性の呼吸疾患になりやすい方がいます。

 

以下のような方は呼吸器疾患にかかりやすいので注意が必要です。

 

•喫煙者
•高齢者・乳幼児
•免疫が落ちている人
•アレルギー体質の人 など

 

喫煙者

喫煙を続けると気管支に炎症が起きて空気の通り道が細くなったり、肺胞が破壊され呼吸機能が低下します。喫煙者は肺がんになりやすいことはよく知られていますが、実際に男性肺がん患者の約68%は喫煙者です。

 

喫煙は呼吸器疾患のほかに、脳卒中など循環器疾患・糖尿病や歯周病など様々な病気のリスクを高めます。

高齢者・乳幼児

成人期に比べると、65歳以上の高齢者や6歳未満の乳幼児は免疫が低い状態です。
元気な高齢者の方は増えていますが、60歳の免疫機能は20歳の半分以下になると言われています。

 

高齢になると十分な睡眠や食事・運動を欠かさずに免疫機能を下げないように気を付ける必要があります。また、予防接種を受けることも大切です。

免疫が落ちている人

高齢者や乳幼児だけではなく、様々な理由により免疫が落ちている人も呼吸器疾患にかかりやすい状態です。

 

免疫が落ちる主な理由
•睡眠不足
•生活リズムの乱れ
•栄養不足・偏り
•ストレス
•糖尿病

 

糖尿病患者さんが肺結核にかかる確率は、2~4倍になると言われています。血糖値のコントロールとともに、睡眠不足や生活リズムの乱れにも気を付ける必要があります。

アレルギー体質の人

気管支喘息など疾患自体が遺伝しなくても、アレルギー体質は遺伝します。両親のどちらかが喘息だと、子どもも喘息になりやすいのはそのためです。

 

アレルギー体質の方で咳や痰が続く場合は、悪化しないうちに受診しましょう。

呼吸器疾患の予防方法

年齢による免疫低下や、アレルギー体質による呼吸器疾患は防げないこともあります。しかし呼吸器疾患の発症リスクを下げたり、悪化させないことは可能です。

 

呼吸器疾患の予防方法には、以下などがあります。

 

•禁煙
•睡眠をしっかり取る
•栄養バランスの良い食事をする
•ストレスを溜めない
•適度な運動をする

禁煙

禁煙は何歳で始めても、様々な呼吸器疾患の発生率を下げることができます。自力での禁煙が難しい方は、病院で禁煙治療を受けましょう。

 

現在禁煙治療は保険適用なので、標準治療にかかる費用は13,000円~2万円程度です。

睡眠をしっかり取る

睡眠不足が続くと、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなります。風邪やインフルエンザをきっかけに、肺炎や気管支喘息を発症することもあります。

 

生活リズムを崩さないように、朝起きたら朝日を浴び、夜はスマホなどブルーライトを見過ぎないように気を付けましょう。

栄養バランスの良い食事をする

栄養バランスが偏ることも、免疫力を低下させます。呼吸は多くのエネルギーを使うため、栄養不足は呼吸器疾患の原因になります。また、ダイエットや偏食には注意が必要です。また、食欲不振で十分に食事ができない場合は医師に相談しましょう。

 

食欲不振は、消化器疾患や精神疾患が隠れている可能性があります。

ストレスを溜めない

ストレスは呼吸器疾患と、大きな関係があります。ストレスが続くと免疫機能が低下するだけでなく、心因性咳嗽(精神的ストレスによる咳)や過換気症候群(過呼吸)・気管支喘息など呼吸疾患を起こしやすくなります。

 

趣味やリラックスの時間を設けてストレスを溜め込まないようにしましょう。

適度な運動をする

運動をすることで心肺機能が鍛えられ、呼吸器疾患の予防に繋がります。特に水泳は身体に負担がかかりにくく、心肺機能を効果的に高められる運動です。

 

まずはウォーキングなど取り入れやすい運動を1日20分を目安に始めてみるのも良いでしょう。

呼吸器疾患の治療方法

呼吸器疾患の治療について、いくつかご紹介します。菌やウイルスの感染による呼吸器疾患と、身近な呼吸器疾患である気管支喘息・COPDについて見てみましょう。

 

感染症による呼吸器疾患の治療方法

肺結核・肺壊疽・肺炎などが該当しますが、治療の中心となるのは、抗菌薬の投与です。例えば肺炎の場合には、通常ペニシリン系やセフェム系の抗菌薬が使用されます。

 

これらの抗菌薬では効果がないマイコプラズマ感染などによる肺炎では、ニューキノロン系・マクロライド系・テトラサイクリン系の抗菌剤を使用します。

気管支等の治療方法

喘息の治療は、発作を予防する長期管理薬(コントローラー)と発作治療薬(リリーバー)の2つを併用して使用します。

 

【長期管理薬(コントローラー)】
•気道の炎症を抑える薬(ステロイド薬)
•気管支を広げる薬(テオフィリン製剤・長時間作用性β2刺激薬・長時間作用性抗コリン薬)
•アレルギーによる発作を抑える薬(ロイコトリエン受容体拮抗薬・抗ヒスタミン薬など)
※必要に応じて、去痰薬や漢方薬が処方されることもあります。

 

【発作治療薬(リリーバー)】
•気管支を広げる薬(テオフィリン製剤・短時間作用性β2刺激薬)

 

長期管理薬を日常的に使用し、発作治療薬の使用回数を減らすことが目標です。特定のアレルゲンがある場合は、除外して生活するように指導します。

COPD(閉塞性肺疾患)の治療方法

現時点では、喫煙により破壊された肺機能を元に戻す方法はありません。COPDの治療は患者さんのQOL(生活の質)を高め、病状の進行を抑制することが目標になります。

 

【COPDの治療薬】
•気管支を広げる薬(テオフィリン製剤・長時間作用性β2刺激薬・長時間作用性抗コリン薬)
•痰を出しやすくする薬(気道粘液分泌促進薬・気道粘液分泌促進薬・喀痰溶解薬など)

 

COPDの治療で一番重要なことは、禁煙です。喫煙を続けていては、COPDが悪化するばかりです。禁煙に加えて、病状に合わせた薬物治療や呼吸リハビリ・酸素療法などを進めて行きます。

 

気管支喘息やCOPDを始め、呼吸器疾患はコントロールが良好になると患者さんは薬を止めてしまいがちです。薬を勝手に止めると発作や病状が悪化するため、状態が安定しても薬を続けることが大切です。薬を減らしたい・変えたい方は、自己判断せず必ず主治医に相談しましょう。