循環器内科
腎硬化症

腎硬化症とは

高血圧が原因となり、腎臓に繋がる血管が動脈硬化を起こして腎臓に障害が起きることを、腎硬化症と言います。腎臓には様々な血管がありますが、中でもろ過の役割を持つ糸球体にある細動脈は、血圧による負担がかかりやすい血管です。
 
糸球体の細動脈に細動脈硬化が起こると、ろ過機能が低下して腎機能低下となります。継続的に血液が十分に供給されないことで腎臓の細胞が死んでしまい、腎臓が萎縮して堅くなるため腎硬化症と呼ばれています。腎硬化症は、病態の進行速度によって大きく2つに分けられます。
 
良性腎硬化症
長年高血圧が続くことにより、少しずつ動脈硬化・腎臓の硬化が進みます。腎臓の機能低下は気が付きにくく、気が付いたときには腎臓以外の動脈硬化も進行していることが多いです。

悪性腎硬化症

腎血管性高血圧のような二次性高血圧により、急激に血圧が上昇して腎機能も急に悪化します。激しい頭痛や嘔吐がともない、治療が遅れると死に至ることもあります。
 

腎臓は私たちの身体で最も血管が多い臓器のため、高血圧による悪影響を受けやすいと言えます。腎硬化症は糖尿病性腎症・慢性糸球体腎炎についで、日本の透析導入原因の第三位となっています。
 
ただし、良性腎硬化症で早期に治療を始めた場合、予後は悪くありません。適切に治療を受けている場合、10年後に腎機能障害が発生する人の割合は1~2%程度です。

 

腎硬化症の診断

高血圧治療中の患者さんが血液検査を受け、腎機能低下の兆候が認められた場合に良性腎硬化症が疑われます。腎機能低下の兆候は、クレアチニン・BUN・血清リン濃度の上昇やeGFRなどで判断します。
 
エコー検査やCT検査により、腎臓の縮小が認められる場合にも良性腎硬化症が進行している可能性が疑われます。また通常、尿検査においては尿蛋白が少なく(1g/日未満)、細胞や円柱の所見も軽微です。

 

尿蛋白が高い場合は糸球体腎炎など別の疾患を疑い、腎硬化症以外の疾患を否定できる場合に腎硬化症の診断が下されます。腎硬化症が起きている場合、同様に他の臓器も動脈硬化による影響を受けていると考えられます。虚血性心疾患や脳血管疾患・眼底網膜病変などがないか、同時に検査を受けて調べておくべきでしょう。
 
悪性腎硬化症は急激な血圧上昇により全身の体調不良を起こし、本人の訴えにより発覚することが多いです。腎機能の急激な低下のほか、眼底機能や心臓など高血圧による標的臓器に障害を認めます。悪性腎硬化症においては、急激な血圧上昇を起こした二次性高血圧の原因を鑑別する検査も必要です。

 

腎硬化症になりやすい方

腎硬化症の直接の原因は高血圧による動脈硬化ですが、以下に該当する方は腎硬化症になりやすいと言えます。
 

  • ・高齢者
  • ・家族に腎硬化症・腎不全の人がいる
  • ・喫煙者
  • ・塩分摂取が多い
  • ・アルコールの摂取が多い
  • ・メタボリックシンドロームの方

 

高齢になると血管の柔軟性が落ちるため、動脈硬化を起こしやすくなります。血圧が安定していても、高血圧治療中もしくは既往歴のある高齢者は、腎機能の低下が起きていないか定期的に検査を受けると良いでしょう。

 

腎硬化症をはじめとした腎機能障害は遺伝性があるため、家族に腎硬化症や腎不全の人がいる場合にも注意が必要です。喫煙や塩分・アルコールの過剰摂取は血圧を上昇させて動脈硬化を進行させるため、喫煙者・塩分やアルコールの量が多い方も腎硬化症になるリスクが高いと言えます。
 
また、メタボリックシンドロームは動脈硬化のハイリスク因子です。単純に体重が多いのとは違い、内臓脂肪型肥満者は特に動脈硬化になりやすいことがわかっています。

 

腎硬化症の改善方法

腎臓障害は放置すると慢性腎臓病・慢性腎不全と進行し、最終的には透析が必要になります。そのためには腎機能の低下が少しでも見られたら、なるべく早めに生活習慣の改善に取り組むのが良いでしょう。
 
具体的には、血圧の管理を中心として血圧上昇の要因を取り除くことです。高血圧は症状がほとんどないため、途中で薬を止めてしまう方が多い疾患です。腎機能の維持のためにも、医師から処方された薬は家庭での血圧が安定していても継続して下さい。
 
喫煙者は禁煙が必要です。また、食事では塩分の摂取を1日6g以下に留めましょう。塩分の排出を助けるために、カリウムやマグネシウムを多く含むものを食べることも、腎硬化症の改善に繋がります。

 

カリウムは野菜や果物、マグネシウムはナッツや海藻などに多く含まれています。ただし腎機能が低下している場合にはカリウム・マグネシウムの制限が必要なため、食事のバランスを変更する場合には主治医に相談してください。

 

アルコールの1日摂取量はエタノール換算で、男性20~30ml・女性10~20mlまでが望ましいです。(男性の場合、ビール中ビン1本もしくは日本酒1合・ウイスキーダブル1杯まで)

 

また食事制限や運動などを組み合わせ、適切な体型・体重を保つことも大切です。腎硬化症の初期症状として、浮腫みや食欲不振など尿毒症の症状が出ることがあります。高血圧治療中に気になる症状が続く場合には、早めに医師に相談しましょう。

 

腎硬化症の治療方法

良性腎硬化症の治療は、高血圧の治療が腎硬化症治療の中心となり、治療目標は血圧130/80mmHgです。早朝高血圧など診察時には平常血圧となる場合もあるため、自宅でも血圧測定を行い厳格に管理する必要があります。
 
高血圧の治療薬は通常、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)やACEI(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)など腎保護作用のあるものが使われます。降圧が十分ではない場合や合併症がある場合は、カルシウム拮抗薬・ベータ遮断薬・サイアザイド系利尿薬などを追加することがあります。また、薬による治療以外にも、必要に応じて食事指導や運動療法の指導が行われます。

 

悪性腎硬化症の場合、腎臓以外にも障害が出ている可能性が高く厳密な血圧管理・全身管理が求められるため、入院により治療が行われることが多いです。
 
良性腎硬化症同様にARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)やACEI(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)などにより血圧降下を行いますが、効果が不十分な場合には経口ではなくこれらの降圧薬などの点滴を行います。
 
ただし急激に血圧を下げると糸球体の機能が低下する可能性があるため、腎機能をモニタリングしながら慎重に血圧を管理します。血圧の降下と平行して、二次性高血圧の原因を探り治療をする必要があります。
 
良性腎硬化症はゆっくりと進行するため、気が付きにくい疾患ですが放置すると徐々に腎機能が悪化して最終的には慢性腎不全となります。腎硬化症を防ぐためには、日ごろから自宅でも血圧を管理することと、定期的に血液検査を受けることが大切です。