循環器内科
高血圧症

高血圧症とは

わが国における高血圧患者は約 4,300万人と推定されており、生活習慣病の中で最も多い疾患です。しかしながら、高血圧自体は痛みや苦しみをもたらすことは少なく、放置されがちなことが明らかにされています。
 
高血圧が十分治療されてないとされる方は推計3,100万人とされています。内訳としては自分が高血圧と気付いていない方が約1,400万人、気付いているが未治療の方が約450万人含まれています。また、治療中にもかかわらずコントロール不良の者は約1,250万人と考えられています。
 
これまでの研究から、長期間高血圧症を有する患者では動脈硬化が進行し、脳心血管イベントや腎機能障害の発症リスクが上昇することが明らかにされています。高血圧症は、十分な治療によって動脈硬化イベント抑制効果が認められます。
 
例えば1950年代までは、日本において結核が一番の死亡原因でした。1960年代以降、結核は治療対策がなされ、急速に死亡原因の中の要因として重要度が減弱しました。代わって、1950年代から1970年代において脳卒中が一番の死亡原因になっていましたが、大きな原因の一つが高血圧症と考えられていました。
 
この期間以降、高血圧治療は急速に進歩し1980年代以降、日本人の血圧は安定化しました。このことは1980年代以降の脳卒中による死亡の減少に大きく関与したものと推定されます。

高血圧の最新の定義と血圧の測定法

「高血圧ガイドライン2019」(JSH2019)による高血圧の定義が一番新しい基準になります。血圧測定法には診察室血圧、診察室外血圧(家庭血圧、自由行動下血圧)の3種類があります。
 
厳密な診察室血圧に基づく診断は、少なくとも2 回以上の異なる機会における血圧値によって行います。 家庭血圧に基づく診断は、朝・晩それぞれの測定値7日間(少なくとも5日間)の平均値を用います。正常血圧は、診察室血圧では<120/80mmHg、 家庭血圧では<115/75mmHgです。高血圧は、診察室血圧では≧140/90mmHg、 家庭血圧では≧135/85mmHgとなります。
 
高血圧患者では診察室という特殊な環境下における血圧値と、リラックスした自己家庭での血圧値では乖離を生じることが示されています。診察室での血圧を治療効果の指標にするより、家庭での血圧を治療効果の指標とした高血圧治療の有効性が示されております。
 
最新のJSH2019では家庭血圧を重要視し、診察室血圧よりさらに低い血圧値分類の定義を示しています。現段階の高血圧治療管理は、JSH2019の推奨する診察室外血圧、特に家庭血圧が大切と考えられます。
 
診察室外血圧として、世界的に注目されているのは自由行動下血圧です。家庭血圧をしのぐ多くの研究成果からは、特に夜間の自由行動下血圧の循環器疾患予後予測能が高いことが明らかにされています。自由行動下血圧測定によって、血圧の日内短期変動や、高血圧治療中に起こる予想外の低血圧によるめまいなども明らかにできます。

血圧管理の目標値

最新のJSH2019では血圧値の分類が厳格になったことと同様に、降圧目標値についても厳格さが求められます。厳格治療群と通常治療群を比較検討したメタ解析により、厳格に血圧を下げた群のほうが、冠動脈疾患や死亡のリスクが少ないことが示されたためです。
 
具体的な血圧管理の目標値は、75歳未満では、降圧目標は130/80 mmHg未満、75歳以上では140/90mmHg未満になります。脳血管疾患、臓器障害や代謝障害の方は、別途確認が必要です。

高血圧症の分類

一般的分類は、本態性高血圧と二次性高血圧です。直接的な原因はなく、遺伝的因子や生活習慣が相互に作用して起こる高血圧のことを、本態性高血圧といいます。
 
高血圧の方のうち、約90%がこの本態性高血圧です。主に35~60歳で発症し、徐々に進行します。降圧剤に対する反応は良好なため、生活習慣の改善とともに降圧剤による血圧コントロールが行われます。
 
二次性高血圧は、直接血圧が上がるような疾患や原因がある場合の高血圧が、二次性高血圧です。本態性高血圧と違い、35歳以下の若年もしくは60歳以上の高齢者で発症することが多く、高血圧の度合いは急速に進行します。
 
降圧剤による反応は弱く、二次性高血圧を引き起こしている疾患や原因が軽快することで、高血圧自体も寛解します。原因がはっきりしている場合は、その治療を優先します。

高血圧になりやすい方

明らかな原因がない本態性高血圧の場合、生活習慣が増悪する因子になります。主なものは肥満症、運動不足、塩分過多、喫煙、ストレス(精神的ストレス、睡眠不足)などです。

高血圧症の改善方法

生活習慣の改善のため、以下の項目の順守が必要です。禁煙をする。食塩の摂取を控える(目標一日6g以下)。肥満を改善し、BMI25以下を目標とする。
 
心血管疾患がない場合、1日30分ほどの有酸素運動を行う。コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える。野菜、果物を積極的に摂取する。エタノール換算で一日あたり、男性は20~30ml以下、女性は10~20ml以下の節酒をします。
 
特に、肥満症、メタボリックシンドロームに伴う高血圧症の場合は、1~3%の体重減少は脂質代謝障害、肝機能が改善し、3~5%の体重減少で収縮期血圧、拡張期血圧、空腹時血糖、尿酸値の改善が期待できます。
 
食事療法や運動療法による減量が、薬物療法より優先されます。食塩の過剰摂取によって高血圧が増悪しやすい反面、減塩による降圧効果が大きく期待できます。
 
副腎皮質のホルモンである、アルドステロンの血中濃度は早朝にピークを迎えるため、朝食を塩分控えめにする工夫が有効なケースがあります。運動療法の実施にあたっては,潜在的な心血管合併症の有無を十分に把握する必要があります。

高血圧症の治療法

適正な治療には、適正な血圧の観察が必要です。できれば上腕部で測定するタイプの血圧計をご利用いただいて、家庭血圧を測定いただき記録することは有用です。
 
まずは、前項の生活習慣の改善を試み、しばらくの間、家庭血圧を測定いただきます。1-2か月で改善しなければ、薬物療法を開始します。薬物療法開始に迷う正常と異常との境の場合には、24時間の自由行動下血圧測定をすることがあります。
 
血圧を精密に測定することで、納得できる判断を下せることになります。内服療法開始後は、治療効果判定のために家庭血圧を記録することをお勧めします。

みたか内科循環器内科の高血圧症の治療方法

ガイドラインに沿った治療の提案をします。年齢や生活環境なども考慮し、治療方法についてご本人と相談して決めます。高血圧症と正常との間の方には、自由行動下血圧なども併用し十分データを提示し判断してまいります。
 
高血圧症の多くの方は、本態性高血圧です。本来性高血圧症の方の治療は、生活習慣の是正と薬物療法になります。初診時の方や急速に血圧コントロールが増悪している場合には、降圧薬療法のみの治療ではなく、原病の治療が中心となる二次性高血圧の可能性を見据えてスクリーニングを行います。
 
高血圧の陰に、本来治療すべき疾患が隠れていないか適切に判断します。もし二次性高血圧の診断がつけば、ご希望に沿って適切な専門病院へのご紹介ができます。適切な専門治療後は、当院での継続治療に戻ることも可能になることが多いのでご相談ください。