循環器内科
急性心筋梗塞

心筋梗塞とは

心筋梗塞は、心臓の栄養血管である冠動脈の狭窄、閉塞により引き起こされ、心筋の非可逆的壊死を伴います。たまたま無症状に心筋梗塞が発見されることもあります。

 

心筋の壊死が発生してから時間が経過した場合には慢性心筋梗塞(陳旧性心筋梗塞)ということもあります。急に発症する場合には、胸痛を伴い非常に重篤感を伴うことが多いです。

 

発症48時間以内のものが急性心筋梗塞とされ、特に注意が必要です。急性心筋梗塞は突然発症し、治療法が確立した現在でも入院できた方の内、7-10%の患者さんが死亡する怖い病気です。

 

急性心筋梗塞発症後は、できるだけ早く詰まった冠動脈の血流を再開するのが良いとされています。迅速で確実な診断が必要です。急性心筋梗塞は、心筋の非可逆的障害が起こる前に診断し治療ができれば大変良いことです。

 

急性心筋梗塞直前の心筋障害が起こりそうになった病態を、不安定狭心症と呼びます。臨床的には急性心筋梗塞、不安定狭心症を含めて急性冠症候群と呼ぶことも多いです。

 

急性心筋梗塞になるとどうなる

急性心筋梗塞の症状は前胸部の疼痛または圧迫感です。背部、下顎、左腕、右腕、肩、またはこれら全ての領域に放散します。痛みは狭心症と似ていますが、通常はより重度で長時間持続します。しばしば、呼吸困難、発汗、悪心、および嘔吐を伴い、安静でもほとんど軽快しません。

 

約3分の1の患者さんは、来院時胸痛が非常に軽度です。「高齢」「女性」「糖尿病」「心不全既往」の場合には、いわゆる急性心筋梗塞と即断できる典型的胸痛でない場合があります。

 

胸痛がない場合でも、50歳以上では「失神」「意識状態の変化」「脱力」「呼吸困難」「上肢の疼痛」、80歳以上ではさらに「腹痛」「嘔気・嘔吐」などの症状で来院することがあります。

 

急性心筋梗塞になりやすい方

 

急性心筋梗塞は、以下のような方は発症しやすいです。冠動脈の危険因子といわれます。

 

・高齢

・男性

・比較的低年齢での冠動脈疾患の家族歴あり(近親者に50~55歳未満でこの病気を発症した人がいる)

・糖尿病

・喫煙

・高血圧

・肥満

・運動不足

・脂質異常症

 

心筋梗塞の予防

心筋梗塞の予防のためには、発症しやすい条件、冠動脈危険因子を是正することが重要です。性別、年齢や家族歴は、是正不能ですが、生活習慣と深く関係する冠危険因子は、生活習慣の改善変容を促進し、疾患の治療をすることで大きくリスクを減らせます。

 

禁煙

禁煙は最も重要です。喫煙は、冠動脈疾患と心臓発作のリスクを2倍以上に高めます。受動喫煙もリスクを上昇させるとみられています。受動喫煙を避けることも重要です。

 

様々な種類の食品を食べる

食事で大切なのは、健康的な体重を維持し、様々な種類の食品を食べることが重要です。果物、野菜、ナッツ類、オリーブ油などをふんだんに使った「地中海地方の食事」には、冠動脈疾患のリスクを低下させる効果があるとされています。様々なビタミンの冠動脈疾患に関しての研究がなされてきていますが、効果があるとだれもが認める結果は出ていないのが現状です。しかし、1日に必要な量のビタミンとミネラルは、食事から摂取したほうがよいです。そして食事は、減塩に努めましょう。

 

過度な飲酒を控える

過度な飲酒はリスクを高め、量が多くなるほどリスクは高くなります。1日に缶ビール1本、日本酒は1合程度にする。週に2日は休肝日を設けるなど、飲酒は控えめにするのがよいでしょう。

 

オメガ3脂肪の摂取

オメガ3脂肪(善玉脂肪)を豊富に含む青魚やサケなどを普段から食べるようすることと、有害なトランス脂肪酸(最近は食材から除かれてきています。)の摂取を確実に避けることが推奨されています。

 

果物や野菜を毎日食べる

果物や野菜を毎日食べると、冠動脈疾患のリスクが低下します。高繊維食も推奨されています。食物繊維には2種類あります。水溶性繊維(水に溶ける繊維質)は、オートブラン、オートミール、豆類、エンドウ豆、米ぬか、大麦、かんきつ類、イチゴ、リンゴの果肉などに含まれていて、高いコレステロール値を低下させます。高血糖を低下または安定させたり、低下したインスリン濃度を上昇させたりする可能性もあります。

 

そのため水溶性繊維は、糖尿病患者の冠動脈疾患のリスクを低下させるのに役立ちます。不溶性繊維(水に溶けない繊維質)は、ほとんどの穀類と穀物製品、リンゴの皮、キャベツ、ビート、ニンジン、芽キャベツ、カブ、カリフラワーなどの果物や野菜に含まれていて、消化機能を助ける働きもあります。

 

しかし、とり過ぎるとビタミンやミネラルの吸収を妨げることがあります。バランスの取れた常識的な食行動が必要と思われます。

 

日常的に運動をする

積極的に運動をする人では、冠動脈疾患や高血圧が発生する可能性が低くなります。持久力をつける運動(速足でのウォーキング、サイクリング、ジョギングなどの有酸素運動)や、筋力を増強する運動(フリーウェイトやウェイトマシンを使っての筋力トレーニング)は、冠動脈疾患を予防するのに役立ちます。過度な運動不足は動脈硬化を促進し、死亡率を高めます。

 

体重をコントロールする

体重のコントロールは、食事や運動とも大きく関係します。適切な体重コントロールは生活習慣病の基礎的な問題を解決するのに役立ちます。

 

生活習慣病の高血圧、糖尿病、脂質異常症の治療は冠動脈疾患の予防に大切です。

 

心筋梗塞の治療方法

急に発症した急性心筋梗塞では、一刻を争う迅速な対応が必要です。そういった啓蒙、治療体制によって急性心筋梗塞の死亡率は非常に改善しています。

 

カテーテル治療

急性心筋梗塞では、緊急心臓カテーテル治療を施行することがあります。手や足から挿入した約1㎜程度のカテーテルから造影剤をいれて心臓の冠動脈の閉塞を確認したのち、治療が可能であればバルーン(風船)で拡張したり、冠動脈の閉塞の原因である血栓を吸引したりしたのち、金属製のステントを留置する方法がとられます。

 

冠動脈バイパス術

カテーテル治療が不能な場合には、冠動脈バイパス術などの提案がある場合があります。心臓の働きが落ちた場合、血圧が低下し、呼吸困難になるような事態が生じることがあり、心臓を補助する装置を装着することがあります。

 

抗凝固療法・抗血小板療法

急性心筋梗塞では不整脈、急性心不全、心臓破裂、僧帽弁閉鎖不全などが出現する可能性があります。血栓による冠動脈の閉塞が病態の主体であるため、血液をサラサラにする抗凝固療法や抗血小板療法などが併用されます。急性期のストレスなどによって消化管出血などの合併症が出現することもあり、血液が止まりにくい状態での出血は特に注意を要します。

 

安定期には抗血小板薬

急性期治療が済んだ安定期には、抗血小板薬を内服し、抗血症板薬による胃潰瘍予防の薬、その他心不全発症予防薬が内服処方されます。再発予防のためのプログラムが開始されます。

 

検診で心筋梗塞が発見された方の治療

一方で、たまたま検診や軽い繰り返す胸痛で発見される心筋梗塞患者さんもおられます。基本は冠動脈の状態を十分把握することと心筋の血液の不足があるのかどうかを評価します。

 

状態把握は、現状では冠動脈CTや心臓カテーテル検査が行われ、心筋の酸素不足の判定は、運動負荷心電図、心臓核医学検査、心臓MRIが有用です。不整脈などの把握のためにHOLTER心電図も計画され、心臓の運動機能評価、弁膜症評価のため心臓超音波検査を行います。それらを総合評価して内服治療、カテーテル治療、バイパス術を含む心臓手術治療を取捨検討します。

 

みたか内科循環器内科の対応

当院の院長は、これまで数多くの冠動脈疾患の評価と治療を行ってきました。その際に大切なのは、様々な検査や治療で患者さんに何をもたらすかの適切な情報の提示です。

心筋梗塞の患者様には、専門病院との連携を取りながら、必要十分な検査や治療をご提案します。