内科
消化器疾患

消化器疾患とは

消化器とは、動物が食べた物を消化や吸収・代謝・排泄するための臓器、もしくはそのために運搬する臓器のことです。具体的には、口腔・咽頭・食道・胃・十二指腸・小腸・大腸・肝臓・胆のう・すい臓などが該当します。これら消化器の病気が消化器疾患です。

 

代表的な消化器疾患には以下のようなものがあります。

上部消化管疾患(食道・胃・十二指腸)

•食道がん・胃がん・十二指腸がん
•胃潰瘍・十二指腸潰瘍
•逆流性食道炎
•胃ポリープ
•ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
•感染性胃腸炎 など

下部消化管疾患(小腸・大腸)

•大腸がん
•過敏性腸症候群
•クローン病
•潰瘍性大腸炎
•小腸潰瘍 など

肝疾患(肝臓)

•肝臓がん
•急性肝炎・慢性肝炎
•肝硬変 など

胆道疾患(胆のう・胆管)

•胆のうがん・胆管がん
•胆のう結石(胆石)
•胆のう炎
•胆管炎 など

膵疾患(すい臓)

•すい臓がん
•急性膵炎・慢性膵炎
•膵石 など

 

消化器のがんは死亡率が高く、日本人のがん死亡原因2~4位は全て消化器のがんです。(1位は肺がん)消化器がんにかかりやすくなる40歳以上の方は、定期的にがん検診を受けるようにしましょう。

 

また消化器に負担をかけないよう、日ごろから食事や生活習慣に気を付けることが大切です。

消化器疾患の症状

以下のような症状がみられる場合、何らかの消化器疾患が疑われます。上部消化管疾患で出やすい症状と、下部消化管疾患で出やすい症状を紹介します。

上部消化管疾患(食道・胃・十二指腸)で出やすい症状

•吐き気・嘔吐
•胃部不快感・胃もたれ
•胸痛・胸やけ
•しゃっくり など

下部消化管疾患(小腸・大腸)で出やすい症状

•便秘
•下痢
•お腹の張り・ガス
•下血
•腹痛 など

 

一時的な体調不良や食べ過ぎ・飲みすぎなどで上記症状が出ても、普通は1~2日で改善します。それ以上、症状が続く場合や症状が強い場合には、内科や消化器科を受診してください。また、下血があるときは、すぐに病院で相談しましょう。

 

上部消化管や下部消化管の疾患はこれらの症状が出やすいですが、肝臓やすい臓は自覚症状が出にくい臓器です。特に肝臓は重症化するまで気が付かないことがあり、「沈黙の臓器」と呼ばれています。

 

症状がなくても定期的に人間ドックや健康診断を受けることが、早期発見に繋がります。

消化器疾患になるとどうなる

軽度の胃潰瘍や逆流性食道炎などは症状が繰り返し、慣れてしまう方も少なくありません。しかし消化器疾患を放置すると、別の病気になったり病気に気が付かないこともあります。

 

例えばヘリコバクター・ピロリ菌感染による胃炎を放置すると、胃潰瘍や胃がんを発症するリスクが高まります。脂肪肝など肝臓の疾患を放置により、インスリン抵抗性が低下して糖尿病を招くこともあります。

 

胃痛や胃もたれがあり食事が進まず栄養失調になったり、ストレスで別の病気になりやすくなる方もいます。消化器疾患は治療を途中でやめてしまう方も多いですが、しっかりと治療を続けることが大切です。

消化器疾患になりやすい方

元々日本人は、消化器疾患になりやすい国民と言えます。なぜなら塩分の多い食事をしており、高齢者を中心にピロリ菌の感染率が高いためです。また日本人がストレスを抱えやすいことも、消化器疾患になりやすい理由となっています。

 

塩分やピロリ菌・ストレスのほか、消化器疾患になりやすいのは以下に該当する方です。

 

•遺伝的素因がある人
•喫煙者
•アルコール量が多い人
•痛み止めなど薬が多い人

 

潰瘍性大腸炎やクローン病やがんなど一部の消化器疾患には、遺伝性が認められています。ただしこれらの病気を持つ家族がいても、必ず発症するわけではありません。遺伝的素因にストレスや疲労・栄養不足など様々な原因が重なると、発症の可能性が高くなります。

 

喫煙は消化器の血流を減少させ、がんや炎症を起こしやすくさせます。特に胃や十二指腸の疾患のリスクを高めるものです。

 

アルコールは適量なら問題ありませんが、量や頻度が高くなると、アルコールが通過する全ての消化器に悪影響を与えます。胃潰瘍や逆流性食道炎・下痢・大腸ポリープは、アルコールが原因となる場合があります。

 

痛み止めなど消化器に影響を与える薬を多く飲むことも、消化性潰瘍の原因となります。その他、感染性胃腸炎や胆管炎など細菌感染が原因となる消化器疾患は、免疫が下がっている方がなりやすい傾向です。

 

高齢者や化学療法を受けている方、糖尿病患者さんや妊娠中の方は免疫が低くなっているので気を付けましょう。

消化器疾患の予防方法

消化器疾患の予防は、第一に、胃がんや胃潰瘍の原因となるピロリ菌の除菌をしましょう。50歳代の約半数、30歳以下でも10~20%がピロリ菌に感染していると言われています。

 

上下水道が整った後の世代でもピロリ菌感染者がいるのは、食器の共有で親から子にうつってしまうためです。ピロリ菌の有無は胃カメラのほか、血液や尿・呼気などで簡単に検査できます。

 

また、食事では塩分を控え、バランスよく食べるようにしましょう。高脂肪食も胆石などの原因になるため、控えてください。家族にがんなど遺伝性のある消化器疾患を持つ方がいる場合には、定期的に検診を受けましょう。

 

喫煙者は禁煙し、アルコールを飲む方は量を控えてください。1日の適量は男性でビール500mlもしくは日本酒1合、女性はその1/2~1/3程度です。またストレスを溜めず、睡眠をしっかり取ることも、消化器疾患を予防することに繋がります。

消化器疾患の治療方法

消化器疾患の中から、患者数が多い消化性潰瘍の治療方法について紹介します。胃・十二指腸にできる消化性潰瘍は、ピロリ菌の感染や痛み止め(NSAIDsなど)の服用が主な原因です。

 

そのため消化性潰瘍が認められる場合、まずはピロリ菌の有無を確認します。ピロリ菌の感染が確認できたら、除菌治療を行います。

ピロリ菌の除菌治療

【一次除菌薬】
アモキシシリン(抗菌薬)+クラリスロマイシン(抗菌薬)+PPI(胃酸分泌抑制薬)

 

【二次除菌薬】
アモキシシリン(抗菌薬)+メトロニダゾール(抗菌薬)+PPI(胃酸分泌抑制薬)

 

痛み止めは可能であれば中止し、中止が難しい場合は薬を減量・変更するか、胃粘膜保護剤を追加します。併せて胃酸を抑制する薬を服用することで、潰瘍の治癒を促します。消化性潰瘍治療に使われる薬には、以下があります。

 

【PPI(プロトンポンプ阻害薬)】
胃酸の分泌を抑制する薬

 

•エソメプラゾール
•ランソプラゾール
•オメプラゾール
•パントプラゾール
•ラベプラゾール

 

【H2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)】
胃酸の分泌を抑制する薬

 

•ファモチジン
•ニザチジン
•シメチジン
•ラニチジン

 

【制酸薬】
胃酸を中和する薬

 

•水酸化アルミニウム
•炭酸カルシウム
•水酸化マグネシウム
•炭酸水素ナトリウム

 

PPIなど胃酸を抑える薬を飲むと症状が軽くなるため、治療途中で服用をやめてしまう方が多いです。しかし潰瘍が完治する前に服用をやめると、高確率で潰瘍が再発します。

 

そのため医師の指示に従い、治療完了まで服用を続けることが大切です。また、逆流性食道炎や胆石症の治療なども、途中で薬をやめないように気を付けましょう。